こんにちは、ライターの米田梅子です。

マンションやオフィスなどの不動産広告は、販売開始時点では建物が完成していないことが珍しくありません。
そんなタイミングで物件を宣伝するために活用されるのが「建築パース」です。
電車内の吊り広告やポスティング、折込チラシなどで、誰でも一度は見たことがあると思います。

建築パースは、建築予定の建物の内外を製図から立体的に書き起こし、完成したあとのイメージを演出する完成予想図。
では、「まだ存在しない建物」を描画するにあたって、クリエイターはどのように意識を働かせているのでしょうか。

CGパースクリエイターであり「スペラボのらぼ」ライターの、シショーさんにお話を聞いてみたところ、パース制作現場の裏側が見えました。


プロフィール
坂田アイコン「シショー」
建築ビジュアライゼーション事業部 
エグゼクティブディレクター 名古屋支部長
社歴7年目。得意なパースは住宅系。自由度が高いところが好き。
パース制作において、月間社内MVP連続受賞の経歴を持っている。


建物は無くても 周辺情報は忠実に

米田:スペラボではマンション広告のパースを、どれくらい扱っているのですか?

シショースペラボでの数は年間で発注いただいてて、だいたい6、7件とかそれくらい。
全体を100%としたら、1%くらいになりますかね。
そのうちのほとんどは内観パース(室内画)です。

米田:では分かる範囲でお答えいただければと思います。
パース制作時点では建物は建ってないんですよね?建物だけじゃなくて、まわりの風景も作ることになると思うんですけど、これって現実の要素が反映されてるんですか?

シショー建っていない場合もあると思います。
ただ、僕が担当していたCGの場合は、既に建築を始めていて、内装含め仕上げの段階であることが多いですね。
基本的には建築予定地を聞いて、周辺の情報を集めて、現実に存在する場所にあわせて制作するようにします。

米田:現実に存在する場所にあわせる、とはどういうことでしょうか?

シショー厳密に合成するのではなく「ありえない風景にはしない」という感じですかね。
たとえば、近くに川があるのに森になってるとか、そういう矛盾がないように気をつけています。

GoogleEarthやGoogleMapで調べてみたり、場所が近ければ現地を見に行ったり。
そこで得た参考にモデリングしたり、似ている風景の写真を入れていますね。

建物の内部を表現する「内観パース」でも「建物の周辺を忠実に再現してほしい」と依頼を受けることもありますよ。

米田:屋外の情報を、内観パースでも?

シショー以前、「窓から見える景色を忠実に再現してほしい」って言われたことがありましたね。
建てたあと、入居した人から「窓から見える景色がパースと違う」と指摘されることがないように。もちろん演出として、きれいに見えるように盛ったりすることはありますが。

米田:自分の部屋から見える風景のことなんて考えたことなかったです。室外からの情報も大切なんですね。

屋外といえば、パースによって、朝だったり夜だったり時間帯が違うじゃないですか。
あれはどういう基準で決められているのでしょうか?

シショースペラボのお客様は、ある程度完成イメージを持った状態でご依頼くださるクライアントが多いので、表現する時間帯も要望から汲み取っています。
たとえば「広い・明るいイメージで売り出したい」と言われれば、明るい時間帯のパースを描きますね。

でも例外もあって。作業を進めていくうちに変更が入ることがあるんです。
「違う時間帯の方が映えるんじゃないか?」と言われたら、昼から夜に、表現する時間を変えますよ。

シショー作品その1

シショーさん作のパース。太陽光・間接照明からなる、やわらかなコントラストがおしゃれ。

 

モデルルームではできないことをパースに反映する

シショー内観パースといえば、モデルルームの代わりとしてパースを作っている場合も多いんですよ。

米田:それはなぜですか?

シショーモデルルームは実際に部屋を作るじゃないですか。ちゃんと家具を置いて。
でも実際に住むときは必要なものでも、搬入が大変なものは置かないんですね。
ベッドだったりとか、冷蔵庫とか。

米田:冷蔵庫も!置いていない家の方がめずらしいですよね。

シショーだから、モデルルームって実際の生活空間と比べてこざっぱりしてるんです。

パースなら搬入コストがかからないじゃないですか。
モデルルームには置かない・置けない家具や家電、インテリアなどを配置して欲しいという要望をよくいただきます。

米田:パースに実在するアイテムを取り入れる場合、その制作元に許可を取る必要があると聞いたことがあります。車とか。

スペラボで使っている素材は既製品なんでしょうか。オリジナルなんでしょうか?

シショーどちらもあります。
基本的には「Ever Motion」や「Viz People」といった、素材サイトで配布されている3D素材を使っています。

クライアントによっては、実在する物を入れて欲しいという要望を受けますよ。
自動車ディーラーさんは特にそうですね。「最新の自動車を配置してほしい」とか。
その場合は、アイテム作成を担当しているクリエイターがモデリングしています。

作品2

画像内、右手前のベッドは、モデリング担当が作った物だそう。

米田:モデルルームの代用的な扱いをされる場合に、他にどんな指示を受けますか?

シショーマンションの内観パースの依頼で「より写真のように、写実的に見えるようにしてほしい」と希望されたのが印象的でした。

米田:スペラボは、絵画のような美しいパースを描いている印象が強いので、たしかに「写真のようなパース」はめずらしい気がします。
パースをリアルに見せるために、どのような工夫をされたのですか?

シショー実際の家具って直角のものってほぼ無いんですよね。
普段の制作ならおおよそで調整している、建具のちょっとした段差や家具の面取りをていねいに行いました。
「どれくらい”R(アール ※曲面)”なのかな」って、実際の物を測って。

 

住んでいるマンションの管理会社に営業をかけ……!?

シショー:自分が住んでいるマンションのパースも描いたことがありますよ。

米田:え!どういうことですか!?

シショー住んでいるマンション……というか、その同じブランドと表現した方が正しいでしょうか。
今は無き福岡支店に勤務していた頃なんですが、福岡県内のあちこちにマンションを建てて、販売・管理を行っている企業があるんですね。
そのマンションのひとつに住んでたんですけど、そこに営業をかけて、ご依頼をいただいたって感じですね。

米田:自分の住まいに直結した会社に営業をかけるっておもしろいですね……。

シショーそうかもしれませんね。ご依頼自体もおもしろくて。
通常は配置する家具・家電については外部のインテリアデザイナーが担当する場合が多いのですが、そのクライアントから受けた内観パース制作の依頼は、床や壁といった部屋の仕上げだけが決まっていて。
インテリアのほとんどを弊社のクリエイターが決めました。

「20代前半の男性の一人暮らし」とか、クライアントさんが持っている「こんな感じにしたい」というストーリーにあわせて、相談しながら家具を選んだり、配置したり。

自由度が高くて、かなり作り甲斐がありました。

作品3

クライアントのストーリーを反映した内観パース。

 

おわりに

身近にありながら、わからないことが多い広告パース。
シショーさんからお話を聞いて、新しい建物に対する理想と現実を結びつけようとするクリエイターの試行錯誤が垣間見えました。

今後、ポスティングチラシや建築予定ポスターを注意して観察してみると、これまでは見えなかった、新しい発見があるかもしれません。

 

おまけ:広告用パースの定番「光の柱」

米田:マンションの広告パースで「光の柱」をよく見かけるじゃないですか。建築予定地から、強い光が吹き出しているように見える表現。
あれは、なぜああいう表現をされているんですかね?

シショースペラボではご依頼をいただいたことは無いので、これは完全に僕の意見なんですけど……。
一番はたぶん、お手軽なんでしょうね。
ビジュアルとして「このエリアの、このあたりに建物が建つよ」っていう情報が、外観のモデリングをしなくても、光らせておけば分かる。そして目立つ。

とりあえず告知だけしておきたいとクライアントが考えているときや、パース制作を依頼するタイミングで、設計図ができていない……というような事情もあるでしょうね。

見る側としては「光ってるなあ」って、思いますよね。

(掲載パース制作by シショー)

 


スぺラボでは、住宅はもちろん、商業施設やカタログ用CGパース、プロダクトの3DCG制作も得意としています。
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▼この記事を書いた人自己紹介_米田梅子